キハ58とは
一般に広義のキハ58系グループとして扱われるのは以下の形式のことです。
北海道用の耐寒耐雪型キハ56、キハ27、キロ26
信越本線用の空気ばね装備車キハ57、キロ27
本州以南向けの標準型であるキハ58、キハ28、キロ58、キロ28
また、後の改造でキハ56を両運転台化したキハ53形500代、キハ58を両運転台化したキハ53形200代、1000代といった派生形式もある。
(キハ53形は元々キハ45系の両運・2エンジン車だが、上記の派生3形式は58系として扱う)
これらの系列全体の製造両数1923両は、日本のディーゼルカーとしては史上最多で、一時は国鉄在籍気動車の3割を占めた。
ほかに郵政省所有の完全新製車キユ25、余剰となったキロの下回りを再利用したキニ58、キニ28、キユニ28などがある。
(キロ改造の事業用車はキハ40系同等の車体を持つ為、40系列に含む誤記載が散見されるが、歴とした58系の一員である)
また、私鉄版キハ58として、富士急行(のち有田鉄道に譲渡)のキハ58000、名古屋鉄道のキハ8000系が存在した
当時、東海道本線の準急東海にデビューした90系(後の153系)並みの車両を非電化路線にも投入の要望が多かった。
当時の非電化線区の急行は準急形キハ55系又は客車で運行されていたが、電車急行とは設備差が大きかったために急行型の車両が望まれ、1961年に満を持して急行型ディーゼルカーが誕生した。
4月にキハ56を中心とする北海道形が根室本線の急行「狩勝」に、続いて7月には善光寺の御開帳に合わせキハ57・キロ27が信越本線の急行「志賀」に、そして10月には本州形のキハ58を中心とするグループが投入された(※1)。
※1初使用の列車は定かになっていないが、準急あさまの増結編成に使われたとされる説が有力
機関は従来のDMH17Cのシリンダ方向を横向きに変更したDMH17H(180ps/1,500rpm)を搭載。
液体変速機は従来からの標準型液体変速機である振興造機TC-2A又は新潟コンバータDF115Aを組み合わせた(※2)。
基本的な下回りは特急形のキハ80系と同じものとなっている。
※2機関と変速機の組み合わせはキハ44500形以来(DMH17B+TC-2)踏襲している組み合わせである。
シリンダを横向きにする事により、室内の機関点検蓋が無くなり、防臭・防音面で絶大な効果を上げている。
台車もキハ55系後期型同様、動台車がDT22A(仕様変更後はDT22C)、付随台車はTR51A(仕様変更後はTR51B)である。
空気ばね台車が既に標準だった同時期の国鉄急行形電車に比較するとグレードが落ちるが、大量に量産しなければならない事情から、コストダウンを優先した結果である。
(当時アプト式区間だった信越本線の横川−軽井沢間を通過させるため(※3)に製作されたキハ57系は、例外的に枕ばねがベローズ式空気ばねのDT31・TR68系台車(キハ82系同等品)を装着していた)。
基礎ブレーキ装置は、当時の気動車用標準型であるDA-1形自動空気ブレーキ(長編成対応車は電磁ブレーキを付加したDAE-1形電磁自動空気ブレーキ)である(キロ28は当初DA-2形、長編成対応車とキロ58はDAE-2形)
また、キハ57系のDT31系台車はディスクブレーキのため、DA系ブレーキシステムに中継弁を付加したDAR形(運転台付車輌はDAR-1、運転台のない車輌はDAR-2)自動空気ブレーキを採用している。
横軽切替後、用途不要となったキハ57は一部が中京・四国へ転じ、四国の2両がJR化後まで生き残った。
追記:後の改造でキハ81系の台車をDT31系に振り替えた際に発生したDT27系に換装した数両のキハ58,28、キロ28が存在する。
※3踏面ブレーキではラックレールにブレーキ引棒が支障するため、ディスクブレーキの台車が必要不可欠であった。
厳密には58系とは異なるが、キハ58と混結することを念頭において開発されたキハ65形についてもここで取り上げておく。
勾配線区では非力なDMH17Hを搭載した58系ではキハ58を中心とした編成にする必要があるが、58系の冷房システム上どうしてもキハ28を編成に入れる必要があった。
しかし、キハ28を組成すると出力不足となるため、大馬力機関と冷房電源を持ったブースターとして開発されたのがキハ65形である。
車体における58系との相違点は簡単に4箇所。キロ28形2300(2500)代後半と同じ雨樋位置、急行形電車と同じ2段窓、折り戸(※4)、手洗い設備なし(※5)。
どちらかというと、キハ91系の設計思想を受けている為、車体構造はキハ91系に近い。また、12系客車と同時期の設計の為、設計に相似点が多いことを付記しておく
※4折り戸となった理由は戸袋を設けると台車の枕バネに支障する為
※5手洗い設備の省略は組成相手のキハ58に手洗い設備が既にある為
機関はバンク角180度のV形12気筒、過給機付きのDML30HSD(連続定格500ps/1,600rpm、最大出力590ps/2,000rpm)、液体変速機は1段3要素型のDW9形となっている。
台車を動台車がDT39(DT39A)、従台車がTR218(TR218A)とした。
基礎ブレーキ装置は一般線区向け急行形では唯一のディスクブレーキとなったため、キハ58のDAE系に中継弁を付加したDARE-1形電磁自動空気ブレーキを装備している
ダイナミックブレーキは機関ブレーキとコンバータブレーキを装備。
当初は九州・四国地区に0代、中央東線の急行アルプス用に500代を配置したが、アルプスの電車化、四国急行の特急格上げなどにより山陰地区や東海地区に転属した。
JR移行後の改造
JRへ移行してからは会社により機関、変速機、台車換装を行った車もある。
区所などにより採用した機関が異なるので、覚書として纏めておく
JR東日本※換装後に転属した場合はこの通りにはなりません。
盛岡:機関をDMF13HZ(新潟)又はDMF11HZ(小松)へ換装
小牛田:機関をDMF11HZ(小松)へ換装
南秋田:機関をDMF13HZ(新潟)へ換装
新庄:機関をDMF11HZ(小松)へ換装
新津:機関をDMF14HZ(カミンズ)へ換装
長野:機関をDMF14HZ(カミンズ)へ換装
JR東海
キハ58形5000代、5100代 ※3000代は台車換装のみ
名古屋:機関をC-DMF14HZ(カミンズ)へ換装、変速機をC-DW14A(新潟)へ換装、台車をDT31C(キハ82廃車発生品)へ換装
快速みえ用に最高時速110km/h対応、コンバータブレーキの追加は無し
キハ65形5000代
快速みえ用に最高時速110km/h対応の為台車をペデスタル式のC-DT39C(C-TR218C)へ換装
JR西日本
キハ65形600代、1600代(エーデル丹後・R65)
キロ65形1、1001(ゆぅトピア和倉)、551、1551(ゴールデンエクスプレス・アストル)
485系等に連結させる為(協調運転ではない)、最高時速120km/h対応。台車をペデスタル式のDT39B(TR218B)へ換装
JR九州
キハ70-1
91年に機関をDMF13HZ(新潟)へ換装(片側のみ)。03年に機関をSA6D125H-1A(小松)、変速機をDW14Eへ換装(120km/h対応)
キハ70-2
03年に機関をSA6D125H-1A(小松)、変速機をDW14Eへ換装(120km/h対応)
キハ71-1、2
台車をペデスタル式のDT39B(TR218B)へ換装。03年に機関をSA6D125HD-1(小松)、変速機をDW14へ換装(120km/h対応)
キハ58形5000代など
試験的に換装されたものがいるらしいので調査中。
なお、小松のSA6D125H系とDMF11HZ系は同形の機関であることを付記しておく。
主要諸元表
|
キハ58 |
キハ28 |
キハ65 |
キロ58 |
キロ28 |
キハ57 |
キロ27 |
キハ56 |
キハ27 |
キロ26 | |
定員(座席数) |
84 |
84 |
84 |
52 |
52 |
84 |
52 |
84 |
84 |
52 | |
自重(t) |
38〜39.4 |
33.8 |
42.9 |
39.6 |
34.8〜36.5 |
38〜38.2 |
35.1 |
38.9 |
33.8 |
34.2〜35 | |
換 |
積 |
4.5 |
3.5 |
5.0 |
4.5 |
4.0 |
4.5 |
4.0 |
4.5 |
4.0 |
4.0 |
主 |
最大長(mm) |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
21300 |
車 |
床面高さ(mm) |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
1250 |
台 |
形式 |
DT22A×2 |
DT22A、TR51A |
DT39、TR218 |
DT22C×2 |
DT22A、TR51A |
DT31×2 |
DT31、TR68 |
DT22A×2 |
DT22A、TR51A |
DT22A、TR51A |
ブ |
種別 |
DA1(DAE1) |
DA1(DAE1) |
DARE1 |
DAE2 |
DA2(DAE2) |
DAR1 |
DAR2 |
DA1(DAE1) |
DA1(DAE1) |
DA1(DAE1) |
機 |
形式 |
DMH17H×2 |
DMH17H |
DML30HSD |
DMH17H×2 |
DMH17H |
DMH17H×2 |
DMH17H |
DMH17H×2 |
DMH17H |
DMH17H |
充電発電機方式容量 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 |
交流 | |
蓄 |
種別 |
8DG |
8DG-A |
TRK15-12 |
8DG-A |
8DG-A |
8DG |
8DG-A |
8DG |
8DG-A |
8DG-A |
付 |
冷却水容量(ℓ) |
253×2 |
375 |
810 |
253×2 |
375 |
253×2 |
375 |
253×2 |
375 |
375 |
最高速度(km/h) |
95 | ||||||||||
製造初年(昭和) |
36 |
36 |
44 |
38 |
36 |
36 |
36 |
36 |
36 |
36 | |
製造所 |
新潟・日車 |
新潟・日車 |
新潟・日車 |
帝車 |
帝車 |
日車・富士重 |
日車(本)・帝車 |
新潟 |
東急・帝車 |
日車(本)・帝車 | |
新製両数 |
860 |
441 |
104 |
8 |
221 |
36 |
7 |
112 |
102 |
28 | |
備考 |
本州用(一部北海道内でのみ使用した車あり) |
信越線(横軽)通過用 |
北海道用 |